電気部品を「受動部品」と「能動部品」に分けて、実験で使った部品を説明します。
受動部品
受動部品は、電源などより供給されるエネルギーを消費したり、蓄積したり、放出したりといった「受動的」な仕事をする部品です。
代表的なものに、「抵抗」、「コンデンサ」、「コイル」などがあります。
抵抗
抵抗は、電源などより供給されるエネルギーを消費することで、回路に流れる電流を一定に保ったり変化させる働きをします。
オームの法則を使って、ほかの部品に定格以上の電流を流さないよう制限したり、欲しい電圧を得るために分圧や、回路を流れる電流を測定する目的で使われます。
市販されている抵抗の値は、1kΩ、2kΩ、3kΩとなっているのではなく、1kΩ、2,2kΩ、4.7kΩと中途半端な数字になっており、この値はE系列という等比数列によって決まっています。
計算結果で得られた抵抗が、市販されていない場合ありますので、近い値のものを使用するか、もしくは市販されいる抵抗の値にあわせて、回路を設計する必要があります。
▶️回路記号
オームの法則については次の記事を参考にしてください。
ボリューム(可変抵抗器)
ボリューム(可変抵抗器)は、抵抗値を変えることができる部品で、抵抗体の上を動く接点(摺動子)の位置により、抵抗値が変化するようになっています。
ボリューム(可変抵抗器)の端子は、抵抗体の両端と摺動子の3つで構成されており、主に、抵抗体の両端に接続した電圧を摺動子の端子から分圧するために使われます。
ロータリー型のボリューム(可変抵抗器)は、一般的に回転させる角度と、変化する抵抗値が比例関係にあります。
▶️回路記号
能動部品
能動部品は電源などより供給される電流(信号)を増幅したり、整流したり、変換したりという「能動的」な仕事をする電気部品です。
代表的なものに、「ダイオード」、「トランジスタ」、「IC(集積回路)」、「オペアンプ」などの半導体部品があります。
半導体とは、導体(金属など)と絶縁体(ゴムなど)の中間的な性質を持った物質(シリコン、ゲルマニウムやそれらの化合物など)です。
発光ダイオード(赤色 OSR5JA3Z74A)
ダイオードは一方向だけにしか電流を流さない半導体部品です。
発光ダイオード(Light Emitting Diode LED)は、電気を光に変換する半導体部品で、汎用ダイオードと同じように一方向だけにしか電流を流しません。
電流を流すためには、アノード端子に電源の「+」を、カソードに「ー」を接続します。
発光ダイオードは、p型半導体とn型半導体が接合されており、電流が流れる方向(順方向)に電圧をかけると、正孔(+)と電子(-)が移動し電流が流れます。
この移動の途中、電子と正孔がぶつかることで結合(再結合)しエネルギーが放出され、このエネルギーが光として放出されます。
この光の色は、使用される半導体材料とその動ける電子と動けない電子のエネルギーの差(バンドギャップ)との大きさによって決まります。
▶️回路記号
▶️電気特性(赤色 OSR5JA3Z74A)
LEDのアノードに電源のプラス側を、カソードにマイナス側を接続して電圧を加えると、アノードからカソードに向かって電流が流れ点灯します。
LEDが点灯する方向に加えた電圧を「順方向電圧(VF)」、その時にLEDに流れる電流を「順方向電流(IF)」といいます。
LEDを扱いう場合は、データシートの「DC Forward Voltage(順方向電圧)」と「Condition(測定条件)」に記入されている電流値を基本にするのが一般的です。・・・【表1】
LED「OSR5JA3Z74A」に20mA 順方向電流を流し、普通に点灯させるためには、2.1Vの順方向電圧をアノードとカソードの間に加える必要がありますが、最低1.8V、最大2.6Vの順方向電圧でも点灯させることができます。・・・【表1】
LEDの明るさは順方向電流の値で決まりますが、「グラフ1」から見えるように、順方向電流が20mA未満でも点灯しますので、使用条件によって設定することができます。
順方向電圧の最大値2.6Vを超える電圧や、順方向電流の最大値30mAを超える電流を連続して流すと、LEDが壊れる可能性があるので注意が必要です。・・・【表1】、【表2】
赤色(OSR5JA3Z74A)のLEDについて説明してきましたが、橙(だいだい)色、黄色、緑色のLEDに赤色と同様に順方向電圧は2.1V程度、青色や白色はそれよりも高く、3.5V程度です。
▶️電流制限抵抗
順方向電流の最大値(OSR5JA3Z74Aの場合は30mA)を超えると、LEDが壊れる可能性があるとお話しました。
「グラフ1」を見ると、順方向電圧が0.1~0.2V増えることで、電流が大きく増えてしまうことがわかります。
一般的な設定値(VF=2.1V IF=20mA)からVFが0.1V以上高くなると、IFが最大値の30mA以上にになってしまい、LEDが壊れる可能性があります。
このように、順方向電圧より少しでも高い電圧がかかると、大きな電流が流れてしまうので、それを防ぐために「電流制限抵抗」が必要になります。
▶️電流制限抵抗の計算方法
計算に当たり、「オームの法則」を使いますので、おさらいが必要な場合は、次の記事を参考にしてください。
次の図は、乾電池と「電流制限抵抗(R)」とLEDをつないだ電気回路です。
右の写真は今回、計算例として使う赤色(OSR5JA3Z74A)LEDです。
「OSR5JA3Z74A」の順方向電圧(VF)と測定条件の順方向電流(IF)は次の表のようになっています。
次の条件で電流制限抵抗「R」の値を計算します。
項 目 | 表 記 | 条 件 | 備 考 |
---|---|---|---|
順方向電圧 | VF | 2.1V(TYP.の値) | |
順方向電流 | IF | 20mA(Condition) | |
電源電圧 | V | 3.2V(乾電池 2本分) |
電流制限抵抗「R」にかかる電圧「VR」は電源電圧「V」から順方向電圧「VF」を引いた値になります。
$$VR= {V}-{VF}={3.2V}-{2.1V}={1.1V}$$
電流制限抵抗「R」に流れる電流は、LEDに流れる順方向電流「IF」と等しいので、オームの法則より電流制限抵抗「R」を求めます。
$$R= \frac {\ VR}{IF}= \frac {\ 1.1V}{20mA}= \frac {\ 1.1V}{0.02A}={55Ω}$$
電源電圧「V」が0.5V高くなった3.7Vの場合の順方向電流「IF」を計算します。
$$VR= {V}-{VF}={3.7V}-{2.1V}={1.6V}$$
$$IF= \frac {\ VR}{R}= \frac {\ 1.6V}{55Ω}= {0.029A}={29mA}$$
電源電圧が電源電圧「V」が0.5V高くなっても、最大順方向電流「IF」の30mAを超えることはありません。
▶️ラズパイPicoWのGPピンとLED(OSR5JA3Z74A)をつなぐことができるか?
上の回路を使って、出力電圧が3.3V 、標準出力電流が4mA(最大8mA)のラズパイPicoWのGPピンに、LEDをつなぐことかできるかを確認します。
条件は次のようになります。
項 目 | 表 記 | 条 件 | 備 考 |
---|---|---|---|
順方向電圧 | VF | 2.1V(TYP.の値) | |
順方向電流 | IF | 4mA(ラズパイPicoWの標準出力電流) | |
電源電圧 | V | 3.2V(乾電池 2本分) |
電流制限抵抗「R」にかかる電圧「VR」は電源電圧「V」から順方向電圧「VF」を引いた値になります。
$$VR= {V}-{VF}={3.2V}-{2.1V}={1.1V}$$
電流制限抵抗「R」に流れる電流は、LEDに流れる順方向電流「IF」と等しいので、オームの法則より電流制限抵抗「R」を求めます。
$$R= \frac {\ VR}{IF}= \frac {\ 1.1V}{4mA}= \frac {\ 1.1V}{0.004A}={275Ω}$$
市販の抵抗はE系列という等比数列になっていますので、ここでは、安全のため計算値より大きい、330Ωの抵抗を使い計算、実測してみました。
電流制限抵抗「R」が330Ωの場合、LEDに流れる順方向電流「IF」の計算値は次のとおりです。
$$IF= \frac {\ VR}{R}= \frac {\ 1.1V}{330Ω}= {0.0033A}={3.3mA}$$
実際に測定した結果は次のとおりです。
項 目 | 表 記 | 条 件もしくは計算値 | 実 測 値 |
---|---|---|---|
順方向電流 | IF | 4mA(ラズパイPicoWの標準出力電流) | 3.77mA |
電源電圧 | V | 3.2V(乾電池 2本分) | 3.16V |
電流制限抵抗の電圧 | VR | 1.1V (V-VF) | 1.25V |
順方向電圧 | VF | 2.1V(TYP.の値) | 1.91V |
順方向電圧「VF」が約1.9V、順方向電流電流「IF」が約3.8mA でも、LED(OSR5JA3Z74A)が点灯することが確認できました。
電源電圧が3.16VとラズパイPicoWのGPピンの出力電圧3.3Vより少し低いことで、実際、GPピンにつないだ場合、少し電流は増えますが、特に問題はないと考えます。